【参拝旅行記】秘境神社巡りの始まり 山梨の玄関口の秘境を目指して 後編

神奈川西端から山梨に入り上野原の山奥へとアタックした前回から引き続き、後編は軍刀利神社奥の院から再び神奈川へ向かい相模湖にて軽い気持ちで山登りしてしまったハードな旅をレポートする。

前回の記事はこちら

【参拝旅行記】秘境神社巡りの始まり 山梨の玄関口の秘境を目指して 前編
普段地方の神社を訪ねるとき、ひとつふたつ大きな目的地を設定してその周りで立ち寄れそうなポイントを探し公共交通ないし車で一日かけて回るよう行程を組んでいる。これまでそのような旅をいくつも続けてきたのだが、今回はそんな神社旅の一つをレポートしよ...

軍刀利神社奥の院へ

軍刀利神社に参拝にくると前回最後の拝殿がゴールだと思って帰ってしまう人もいるかもしれないが非常にもったいない。ここから先が本番だと言っても過言ではないのである。

軍刀利神社奥の院
〒409-0111 山梨県上野原市棡原概要軍刀利神社から進むこと10分前後、川流れ巨木が立つ聖域のような空間がある。まさにパワースポットと呼ぶに相応しい場所で、県指定天然記念物の大桂はあまりにも大きくただただ圧倒される。軍刀利神社奥の院は生...

さらに奥深くへの道

社殿裏から続く道はさらに細く、ちょっとした山道のようになる。たまに参拝客とすれ違うこともあるがせいぜい1組程度、夏場はぜひ鈴を鳴らしながら歩いてもらいたい。

程なく奥の院の鳥居が見えてくる。写真ではほぼ見えないが鳥居の先には砂防ダムがあり、折り返しつつ登り道をいくと下の写真のようにダム上の横を通る。あまり見たくない看板を横目に先を急ぐ。

奥の院まではもう一本道である。右手を見上げると何かしらケモノが駆け降り突っ込んできそうな杉林

まさに神域 奥の院へ

小さいが厳かな雰囲気の鳥居、その奥になにか見えるぞ…と進むと…

でっか…と思わず声が出る巨木が赤い橋の奥にそびえ立ち、その先に奥の院が立つ。まさに神域と呼ぶにふさわしい空間が広がっていた。

派手さのない社殿と巨大な大桂。樹高は31m、幹周りは9.0mとのこと(環境省巨樹・巨木林DBより)。絶えず水の流れる音が響いている。

お参りを済ませ振り返るとまた違った雰囲気の立ち姿 大地から噴き出してるのかと思うほどの迫力

社殿裏からは登山道が続いており、軍刀利神社の元社へと至る。                                                       

軍刀利神社元社
〒190-0223 東京都西多摩郡檜原村南郷概要上野原市軍刀利神社の奥の院裏から登山道に入り、女坂コースを1時間程度登ると元社に至る。男坂コースという直登コースもあるようだが基本的に廃道になっているようで登山上級者でない限りは控えた方が良さ...

ゆっくりしていたかったが非常に怖かったので退散。冬場であれば草木も少なく見通しもいいので参拝しやすいかと思う。

冬の奥の院 まるで違う景色

この後何度かこの場所を訪れたが、時期によっては何組か参拝者とすれ違ったり、また神社とは関係ない登山レポートにも出てきたりと意外に知られたスポットだった。季節によって違う表情を見せるこの秘境にぜひ足を運んでもらいたい。もちろんゴミを捨てるなど神域を汚し自然を破壊する行為はNGだ。

奥の院鳥居を出ると足早に下山し上野原駅へ向かう。

相模湖の秘境を訪ねる

なんとか計画通りに井戸バス停からのバスに乗り込む。逃せば1時間足止めを食らうかひたすら歩くハメになる。

上野原駅前までバスで行き、中央線に乗り込んで相模湖駅へ向かう。

相模湖中央道を横切り與瀬(よせ)神社へ

相模湖駅に到着。残る予定は與瀬神社産霊宮水上神社の二つ。日が長いとはいえまあまあ夕方なので早足で與瀬神社を目指す。

與瀬神社
〒252-0171 神奈川県相模原市緑区与瀬1392概要相模湖の近く、中央道を渡り山へ進んだ先に鎮座する。薄暗い参道を進んでいくと現れる隋神門がとても雰囲気がよく、拝殿に至るとこんな山奥に!?というくらい立派で驚く。「虫封じ」がご利益として...

歩くこと10分程度、山側の方向に鳥居が見えてくる。

この鳥居の先の階段を登ると橋になっているのだが…

なんと中央自動車道の上を渡るのだ。高速道路を通したのが当然後なので道路建設時は一悶着あったのかなーなどと想像するが、結果類を見ない風景をもつ神社になった。

左手に鳥居、右手には慈眼寺が建つ

鳥居をくぐれば一気に薄暗く不気味な雰囲気が漂い始める。この辺で獣には遭わないと思うがそれよりも階段がやや急なので注意

隋神門の先に階段が続き拝殿が見えてくる

非常に立派な拝殿。明治時代に火事で多くの社殿を焼失してしまうが氏子、崇敬者たちの手により再建、拝殿に至っては大戦中に着工し終戦後に再建したという(神奈川県神社庁/與瀬神社より)。

相模湖駅は元々與瀬駅だったという。町の名前を冠した神社、焼失した時の住民の喪失感はいかほどだっただろうか。再建された現在でも大きな絵馬殿や境内社が並ぶなどその規模、広い敷地に驚かされる。

拝殿に向かって左の奥は明王峠、陣馬山に至る登山道に続いている。軍刀利神社と同じくこちらも登山者には知られた神社なのかもしれない。

神社をあとにして相模湖を望みつつ最後の目的地へと向かう。

相模湖を見下ろす頂の神社へ

最後の目的地は産霊宮(むすびのみや)水上(みなかみ)神社である。相模湖を望む嵐山の山頂に鎮座する小さな神社。

與瀬神社からやや距離があるが、相模ダム方面へと歩く。

相模湖大橋から相模湖を見る 何度かきたことがあるがいつもダム穴が浮いている気がする…と思ったら「エアレーション」という水底から空気を噴射して「アオコ(藍藻の群集)」の発生を抑える装置らしい。

相模ダムは秩父や奥多摩の巨大ダムと比較するとそれほど大きいわけではないが横浜市、川崎市の水瓶として重要な役目を担っている。ダム建設にあたっては、かつてこの地にあった村などは戦時中という抗えない時代の流れの中半ば強引に水没を納得させられるという暗い歴史を持っている。対してダム建設においては83人の従事者が亡くなっており、そのような歴史の上に現在の生活が成り立っている現実がある。

そんな相模湖から相模発電所方向へ進むと産霊宮水上神社への参道…というか山道がある。事前にレポートなどを読んでいたが15分程度で山頂まで登れる…と記憶していた。

入山。西陽が差すなか木立を分け入って登っていく。意外と急であっという間に息が上がる。

横を見るとこんな感じ。ヒト一組とすれ違うが細い道で長い時間孤独な登りである。とっくに15分は過ぎた。

後々改めて確認すると30分程度かかるものだという。なにを見て15分と勘違いしていたのかはもうわからない。それでもやや早いペースだったためか、20分で開けた場所へ出た。

山頂とはいえ木々に囲まれそれほど周りを見渡せない中に佇む、小さいながら雰囲気抜群の社                 産霊宮水上神社である。

昭和30年に相模湖の湖水浄化と平安を祈るため建立された比較的新しい神社である。天之御中主神アメノミナカヌシノカミ瓊瓊杵尊ニニギノミコト木花咲耶姫コノハナサクヤヒメという日本神話では名の知れた神々が祀られている。

そして山頂では1箇所だけ景色の開けた場所があり、相模湖を望むことができる。

ちょうど隠れていた西陽が強く差した。スピリチュアルな感覚はないが流石におおぅ…となった。

やや木々が多いが湖と奥の街を一望する絶景である。標高406mの嵐山の由来は山容が京都嵐山に似ているからだという。

それにしても、産霊(むすびの) 宮水 上 神社と聞いてこの景色を見るとあの映画を連想するのは自分だけ?

ともかくカタワレ時になる前に下山する。

日が当たっている間はまだ安心して降りられるが

こうなってくると早く降りねばと焦る。藪の多い山はなおさらに

たまに聞こえてくるガサッという音が恐怖を煽る。だいたい小鳥だが。

とはいえ下りは登りより早い。10分ちょっとで登山口に出る。相模湖まで戻ると一安心。

長い一日を終えて

日も暮れて疲労困憊で相模湖駅に着く。

藤野から上野原まで歩くだけでもまあまあな距離だが軍刀利神社を奥の院まで登って降りて、與瀬神社の急階段を登って降りて、嵐山を登って降りてするという狂った旅がようやく終わった。ここには書いていないが所用があって別の急坂を30分弱登り降りもしている。

コロナ禍によって溜まった鬱憤を晴らすようにと前編の始めに書いたが、自分がどういう神社が好きなのかということが(この時点で神社を巡り始めて3年で)ようやくわかったという収穫もあり、疲れよりも清々しさの方が大きかった。

神社巡りは、何よりそれまでどうとも思ってなかった駅だったり町が神社を回ったり調べてみたりすると分厚い歴史を持っていたりして見方が変わったりするのが醍醐味の一つだと思う。ぜひ近所でもちょっと遠出したついででもいいので、神社に目を向けてみてはいかがだろうか。

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