街中の神社にそびえる巨樹

山の奥深くの神社を訪ねるとき、少なからず巨大な樹木への期待を抱いて参拝する。対して都会や住宅街の神社を巡るときは特に木々のことはそんなに考えていない。実際その辺の街路樹よりは大きいものの、そこそこの太さの木々が並んでいるくらいである。そんなところに驚くほどの巨樹が摩天楼の如くそびえ立っている神社に出会うことがある。

街中巨樹を訪ねる

これまでそのような神社と何社か出会ってきたが、今回は関東、九州などから4社を紹介しようと思う。

八枝神社(埼玉県)

埼玉県上尾市の西の端、荒川のすぐそばの住宅街に鎮座する神社。素戔嗚尊(スサノオノミコト)を御祭神として祀る。神社にある獅子頭「狛狗大神(はっくだいじん)」を年間通じて信仰圏の町などに貸し出すということが古来より続けられてきた。その範囲は埼玉県内から東京都の一部(足立区、練馬区、清瀬市)にまで及ぶ。

大宮、川越、上尾それぞれからバスが出ている。「平方」バス停を降り数分、住宅街を歩いていくと鳥居が見えてくる。普通の神社かなと思って入っていくと…

境内ど真ん中に存在感抜群にそりたつ2本の大欅。まるで象の足。幹回り6.4m(環境庁巨樹・巨木林DBより)の巨木。埼玉県教育委員会が主催しInstagramで募集した「埼玉巨樹番付」では堂々の県内2位をつけ「西の横綱」となった(1位は上谷の大クス)。拝殿横の大木は欅とエノキ。これら境内欅・エノキ群が上尾市の天然記念物として指定されている。

こちらは達筆な御朱印でも有名。八枝神社は「どろいんきょ」といい隠居神輿を泥の中で転がす奇祭が行われるのだが、それを模した御朱印も出している。

愛宕神社(千葉県市川市)

続いては千葉県。市川市北国分、矢切駅の東側で東京外環自動車道の手前に鎮座する。この神社の特徴としては住宅街の中にありながら200m近くの参道があることなのだが、その起点市川市と松戸市の境に立つ2本の巨大な大イチョウがあまりに唐突に現れて「えっ!!でっか!!」と思わず声を上げてしまうほど。

まずは参道の先の鳥居と社殿 住宅街の中ながら大木に囲まれ一段高いところにある境内は神域を形成している。

なかなか頭身がおかしい特徴的な狛犬も目を引き魅力的。

昭和6年に造営された御社殿。京都愛宕神社から勧請された。

そんな愛宕神社の入口に聳え立つのが…

圧倒的存在感

野太い鳥居のように立つ2本の大イチョウ。それほど広いわけでもない道の中にあってより大きく感じさせる。葉が色づいている頃合いはまだ参拝していないが、調べてみると空が埋め尽くされて見えないほどの迫力。左側は数十年前に落雷によって身をえぐられるも新たな樹木が成長しているという。

反対側から。樹齢も神社創建もはっきりしたものはわかっていないようだが、だいたい350年前という資料もあるし、イチョウ横の由緒書きには樹齢400年程度で創建はもっと前だと記載されている。

北岡神社(熊本県)

九州へ飛んで熊本市の中心部、熊本駅からすぐ近くの北岡神社へ。

ここは京都の八坂神社から勧請された神社で「祇園社」とも呼ばれている。駅から徒歩で行ける街中にありながら唐突に目を引く2本の巨大な夫婦楠に圧倒される。

マトモにフレームに入れられないほど巨大な樹木が二つ、それも街中の道路沿いに在るというのが驚き。どちらも幹回り10m越えの超巨木である。

創建1,000年を超える古社。社殿近くにも夫婦楠ほどではないもののとても大きな「宝授の大楠」がたつ。

いつまでも見ていたい立派なお姿

御朱印アリ。力強い字である。

宇美八幡宮(福岡県)

再び九州のこちらは福岡県、博多から南東方向の宇美町に鎮座する大きな神社である。八幡宮といえば御祭神が神功皇后応神天皇でおなじみだが、こちらの神社は神功皇后が三韓征伐の帰還の折に応神天皇をお産みになられた土地で 産み→宇瀰→宇美 となり神社の名前、町の名前になったという由緒がある。

この神社のシンボルは国指定の天然記念物である「衣掛(きぬかけ)の森」「湯蓋(ゆふた)の森」という二つの巨樹である。樹齢2000年以上とも推定されるもので、その出立ちはもはや生き物のよう。

お正月で大盛況の宇美八幡宮。由緒からもわかるように「安産・子宝のパワースポット」であり、ファミリーでの参拝者が多いように感じる。

まずは参拝順路に倣って左手へ

社殿左手に聳え立つ「衣掛(きぬかけ)の森」。日本の巨樹ランキングトップ10にも入るまさに国を代表する大楠である。一本ながら森と称される枝葉の広がりがすごい。

もう一つの巨木に向かい社殿裏を通ると境内末社「湯方社」とたくさんの石が積まれているのが見える。安産祈願を終えた妊婦がお産の鎮めとしてここの石を預かって持ち帰り、出産の暁に別の新しい石に子供の名前等を記して成長を願い、初宮詣の御祈願にてお祓いの後に預かった石と一緒にお納めするのが慣しとなっている。

それらを横目に進むとやがて現れるのが…

湯蓋(ゆふた)の森」神功皇后が応神天皇をご出産された際にこの楠の下で産湯を使われたとき、枝葉が産湯の上に蓋をしているように見えたことがその名の由来と言われる。根も枝も迫力がすごく巨大生物のような佇まい。根と根の間にトトロの森への入口でもあるんじゃないかと思えてくる。

その2本以外にも巨樹がボンボン立つ宇美八幡宮

御朱印を拝受。しなやかで美しい字

いかがだっただろうか。神社であるから残されてきた景色ではある。しかしながらもしも開発されていなかったらこの町はどのような景色だったのだろうかと想像が膨らんだりする。このような神社は日本中にあると思われるし、今回紹介した以外にも街中巨樹神社はあった。今後も魅力的な巨樹神社が貯まり次第随時まとめていきたいと思う。

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